
先日NHK衛星から録画した、フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルの『ドン・ジョバンニ』をすこし観てみました。放送されたのはリマスター版というものでした。
これはザルツブルグ音楽祭といっても、いささか事情がある映像です。
映像は、音に合わせてあとから演技したもの。セットはザルツブルグ音楽祭と同じものらしいですが、いわゆる「口パク」であります。
実は、『ドン・ジョバンニ』の実演舞台って、演出上、退屈する場面が多い、と個人的には思っています。むしろ『フィガロの結婚』のほうが、アンサンブルで魅せる、聴かせるので実演は退屈しない。
でも、このフルトヴェングラーの『ドン・ジョバンニ』は、すごく惹き付けましたねえ。ちょっと観るつもりが、やめられませんでした。
とくにエルヴィラを歌うデラ・カーザがいい。ここでの彼女の美しさは、映画女優のようです。シエピのドン・ジョバンニも文句なし。あのどうでもいい(?)マゼットでさえ、見せてくれます。
もちろんフルトヴェングラーの演奏もいいのでしょう。
まずは序曲の、カラーで映る、フルトヴェングラーの指揮に感激します。
「口パク」とはいいながら、これは映像で観る『ドン・ジョバンニ』のベストだと思います。
映像のなかに流れている空気が全然ちがうのです。たとえ現在のオペラ公演の『ドン・ジョバンニ』を録画しても、ここまで緊迫感のある映像、音楽は体験できないと思います。
今回NHKで放送されたリマスター版とはちがうと思いますが、DVDも発売されているようです。
ドン=ジョヴァンニ*歌劇 [DVD]
1月19日発売 EMIフルトヴェングラーSACD一覧